【山道具図鑑】Vol.2 シェルターの魅力は軽量性だけではない ~LITEWAY PYRAOMM TARP~
ウクライナ発のハイキングギアブランド「LITEWAY」のワンポールシェルター「PYRAOMM TARP」をご紹介します!
※本記事では1〜2人サイズのPYRAOMM DUO TARPをベースにお話します。
PYRAOMM TARPはトレッキングポール等を使用して設営する非自立式のシェルターです。
設営方法は四隅をペグダウンしてテント中心にポール立てるだけ。
慣れれば設営1分、撤収1分でできるほどお手軽です。
素材は1.1 oz Silpoly 20D RipstopとULTRA TNTの2種類を当店はラインナップしています。
それぞれの特徴は以下の通り。
・1.1 oz Silpoly 20D Ripstop
ポリエステルにシリコンコーティングを施したこの生地は柔らかくツルツルとした質感が特徴。20Dの厚みは軽量性と耐水性(耐水圧2000mm)、強度を両立しています。
同じような手触りのシルナイロンと比較すると、シルポリエステルは生地が保水しにくく乾きやすいため、縦走の際に雨に降られてもシェルターが重くなりにくいです。
耐候性も高く、長く相棒として使用できることでしょう。
ただし素材の特性上、シームテープでの防水処理ができないため、塗るタイプのシーリング剤でシーム処理をご自身で施す必要があります。
・ULTRA TNT
網目にしたUltra糸を2枚の0.25ミルPETフィルムでラミネートしたこの生地は、パリパリとした質感が特徴。Ultra糸は高い引裂強度と耐久性を確保し、PETフィルムのラミネートにより、防水性に特に優れています。また、保水しないため雨や結露によって濡れても叩けばドライになる点も魅力。
シェルターの縫い目はシーム処理が施されているので追加でのシーリング処理は必要ありません。
PYRAOMM DUO TARP(Silpoly)の重量は付属品込みで495g。
収納したサイズ感は500mlのアルミ缶2個と同じくらいでとてもコンパクト。
収納時は畳んでも良いのですが、Silpolyの生地はツルツルしていて少し畳みにくいです。
店主は天頂部をつまんで、付属のスタッフサックに何も考えずにガシガシ突っ込んで収納しています。
スタッフサックはロールトップ式のため、仕舞ったらコンプレッションして空気を抜くことでコンパクトになる点も良いです。
対してULTRA TNTは生地にハリがあり畳みやすく、収納時のイメージとしてはレジャーシートを畳んで仕舞う感覚に近いです。
それぞれの収納サイズの比較は以下の通りです。(サイズ:実測値、重量:カタログ値、付属品含む)
PYRAOMM SOLO TARP(Silpoly):160×120×100mm,410g
PYRAOMM DUO TARP(Silpoly):150×180×80mm,495g
PYRAOMM SOLO TARP(ULTRA TNT):250×180×80mm,455g
PYRAOMM DUO TARP(ULTRA TNT):250×180×100mm,535g
SOLO・DUOの選び方は、人数やテントサイトでの過ごし方で選んでいただければ良いと思います。
素材による選び方は、
Silpoly:とにかく軽く、コンパクトさを求める方、比較的手頃な価格が魅力。
ULTRA TNT:堅牢性、防水性を求める方
結露しやすさの度合いに関しては素材の特性上、ULTRA TNTの方が高いですが、実用上は換気を怠るとどちらも大差なく結露は発生します。
概要を把握したところで細かいディティールにも触れていきましょう。
デザインの特徴であるカテナリーカットはシェルターが濡れて重くなった際のガイラインの調整を減らしたり、耐風性を上げる効果があります。(カテナリー:糸と糸の両端を持って垂らしたときの曲線)
張ったときの形や出入り口・ラインロックの位置など、前後左右対称の作りとなっています。
長辺にはセンターファスナーの出入り口があり、半分だけ開放したりすべて開放したり、その時の過ごし方によって様々なアレンジが楽しめます。
開けたパネルはコードロックで束ねておけます。
ファスナーはアクアガードファスナーを採用。防水性はもちろん、開閉の際に生地がファスナーに噛み込まない点も良いです。ダブルジップのため上からも開けられるので、ちょっと外の様子を見たいときや換気したい時に便利です。
ファスナー下部にはバックルが付いており、風などで力がかかった際にファスナーが破損してしまうことを防げます。
空間は172cmの店主が一人で過ごすには十分な広さ。ポールで隔てられた片方を寝室、片方を土間兼荷物置きとして使用したり、二人で寝る際はポールが仕切りになります。笑
別売りのA-FRAME CONNECTORを使用すると真ん中のポールがなくなるので、最も天井が高い位置に座ることができます。
防水性は高いシェルターですが、透湿性は低いのでどうしても結露が発生してしまいます。
A-FRAME CONNECTORを使用することで、中央に寝ることができるのでシェルターの結露がシュラフについてしまうことを軽減できます。
側面上部には2箇所のベンチレーションがあります。縫い付けてある芯をつっかえ棒にすることにより、大きく開くことができます。
また、ベンチレーションから繋がるゴムコードが、サイドパネルの中央に接続されており、そこからガイラインをペグダウン可能です。この部分を張ることにより、耐風性の強化や居住空間を多少広くすることが可能です。
その他にもガイラインを取り付けられる箇所があり、耐風性を高めることができます。
付属のラインロックはワンタッチで直感的に張り具合の調整が可能なので、張り具合を微調整する必要があるワンポールシェルターでは助かります。
天頂部の内側のポールが当たる部分には補強が施されています。
天頂部の外側にループとラインロックが付いているので、吊り下げて設営することも可能です。周囲に木がある場合はガイラインを渡して吊り下げることにより、室内を広く使えます。
「虫が多い時期は虫の侵入が気になる。」なんて方は別売りのインナーメッシュもあります。
DUO用のメッシュの場合、室内空間をすべてメッシュにするFULL MESHと寝室のみメッシュとするHALF MESHがラインナップされています。
とはいえ、このシェルターの魅力はなんといってもその開放感。ドーム式のテントと比較してより自然をダイレクトに感じることができます。
なので、まずはシェルターのみで使用してみることが個人的におすすめです。
雪山では端の部分を雪で埋めてしまえば風の侵入を防げます。(換気にはご注意ください!)
脱ぎにくい冬靴を履いたまま中で過ごせて楽ですし、雪を積んでテーブルを作ったり自由な過ごし方ができるのも楽しいですね。寒い時期は結露も凍って霜になるので、シュラフの濡れの心配も少なく、撤収時に叩けばある程度霜は落ちるので使い勝手が良く、冬も使ってほしいアイテムです。
ここまでメリットを並べてきましたが、自立式テントと比較するとやはり悪天候時の快適性は劣りますし、フロアレスなため、より地面の水はけに気を使う必要があります。
そのような不便さやクセを理解して工夫で乗り越えることが面白い点だと思いますし、使いこなせればこの軽量コンパクトさは大きなアドバンテージになります。
これからワンポールシェルターを使う方は森林限界を超えないテントサイトから始めてみるのがおすすめ。その点八ヶ岳のテントサイトは樹林帯にあることが多いのでデビューしやすいですね!