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【登山紀行】vol.21「そうだ、雪化粧した塩見岳に会いに行こう。笹山ダイレクト尾根と天空のポップコーン」

昨年に比べて降り始めは遅かったものの、山々は順調に積雪量が増えていますね。久々の深い雪を楽しむべく、先日のお休みは谷川方面の縦走を計画していたものの、生憎の天気で断念。荒れる日本海側とは打って変わって天気の良さそうな南アルプスへと赴くことにしました。

肝心の山選びですが、去年の今頃に行った塩見岳は過酷ながらも美しくて思い出深く、久しぶりにその姿を拝みたい、ということでかねてから行きたかった南アルプスの笹山に決定。

笹山(別名:黒河内岳)は農鳥岳から更に南下した場所に位置します。南アルプス屈指の人気を誇る白峰三山の縦走路から外れた場所に位置すること、またそのアプローチの大変さも相まって山梨百名山の中でも四天王と呼ばれているとかいないとか。

スタートは奈良田の駐車場から。今回のルートは笹山から東に伸びる尾根、通称「笹山ダイレクト尾根」を辿ります。距離6.5kmで標高差2000m弱を稼ぐなかなかパンチのあるルートを、今シーズン初の10kg強の雪山の泊まり装備を背負って登ってきました。

Written by Shunpei

さて夜明け前に茅野を出発し、6時前頃まだ暗い奈良田の駐車場に到着。若干仮眠して7時に奈良田湖をスタートします。両俣小屋方面から北沢峠方面へぐるっと北上して南に流れてくる早川の谷の深さはどこから見ても南アルプスの懐の深さを感じます。
スタートしてすぐ吊橋を渡り、発電施設の脇を通り抜けて登山口に到着。この笹山ダイレクト尾根のコースは尾根に上がるところから始まります。序盤は急斜面にジグザグにつけられた、作業道を兼ねた道。雪山装備を積んだザックの重さと冬靴の重さに体を慣らすように、一歩一歩ゆっくりと進みます。

水力発電の施設を過ぎて尾根に上がると、杉林から一変して落ち葉がフカフカな広葉樹林の道へと変わります。急になったり平坦になったりする尾根は、アセビのトンネルがあったりして気持ちよく歩みも進みます。チラッと見えた白河内岳方面の稜線は真っ白で、遥か遠くの頂にワクワクします。

しばらくは太い尾根をゆるくつづら折りながら高度を上げていきます。地図上では難路とあったのでいったいどんな南アルプスらしい悪路かと覚悟をしてきたのですが、道はそこまで荒れておらず順調に歩みを進めます。
2000mを過ぎたあたりからようやく雪が現れ始め、樹林がシラビソへと変化し、更に進んで積雪が増えてきたところでアイゼンを装着。まだ雪がそう多くない道は下に石や根っこが隠れていて少し歩きにくいです。

途中ほんの少し眺望があり、遠くには鳳凰三山や富士山、北岳の池山吊尾根が見えました。鳳凰三山の手前に見える大唐松山がかなり目立っていて、この日行きたい山リストに追加されました。

14時過ぎに笹山南峰に到着しました。南峰は樹林に囲まれ眺望がイマイチ。笹山が山梨百名山の四天王と呼ばれている所以は標高差もさることながら、山頂まで樹林帯が続くという点もあるかもしれません。

サクッと北峰まで移動すると、会いたかった塩見岳が正面にドーンと構えます。塩見岳は烏帽子岳の方から見るドームの形が目立つ姿も格好良いのですが、東から見るとまた印象が違います。

その塩見岳からは、我々の行きたいルートリストの上位に入っている蝙蝠尾根が伸びています。地図上で見るよりも長大に感じる尾根と、まさにコウモリが翼を広げたような形をしている立派な蝙蝠岳の迫力に圧倒されます。
更に奥には遠いながらも圧倒的な存在感の荒川三山。南アルプスの山は大きく、遠くても存在感が強いです。

時間も良い頃合いになってきたため、幕営地に戻り夕食の準備と水作り。湯煎したハンバーグをアルファ化米に乗せたハンバーグ丼を頬張りつつ、どんどん雪を溶かして水を作ります。
先日山と道のHLC鎌倉が主催する丹沢でのワークショップに参加した際に、スタッフのおーじさんが「アイスランド縦断では行動食にポップコーンを食べていた。」と言っていたのが印象に残っていて、試しにポップコーンを作りました。昔懐かしいジャズポップコーンをバーナーでしばらく炙るとパチパチ!と次々弾けるポップコーンたち。少量のタネで満足感のある量が出来上がるので今後もハマりそうです。ただし、テントにほんのりバターの香りがつきます。

5時過ぎには食事を終え、夕日をほんの少し眺めました。北岳方面は雲がモクモクながらも、その隙間から見える真っ白な北岳と池山吊尾根にはチャレンジ欲を掻き立てられます。

その後はあまりの寒さにすぐに寝床を整えてシュラフに入りました。この日は強い寒気が入り込む影響でかなり冷え込む予報でした。4時過ぎに起床した時の気温は-18℃でしたが、幸い風もなく静かでぬくぬくと寝られました。妻は就寝中、途中でダウンシューズが脱げたようで、あまりの足の冷たさに早くに目が覚めてしまったようです。

お湯を沸かしていつも通りカレーメシを流し込みます。最近山での朝ご飯をカレーメシに頼りすぎて飽きてきたのでそろそろメニューを変えたいところです。ご飯を食べた後は朝焼けを見に再び北峰へお散歩しました。北峰は風が強くかなり寒いため長居はできず、ぐるっと一通り堪能してそそくさと南峰へと戻りました。

撤収して7:30に下山を開始。昨日から少し雪が降ったようでトレース上には5cmほどの積雪がありました。時々雪に隠れている根っこや岩に気をつけながらぐんぐん標高を下げます。2000m付近がちょうど雪雲に覆われていてちらついていましたが、1600mの水場分岐に着く頃には雲を抜けて晴れてきました。落ち葉と少しの雪のミックスは滑りやすく、慎重に下ります。

終盤の水力発電施設からのつづら折れのしんどい道を下りきり、12:00に無事に下山しました。体力勝負で眺望もあまりない尾根ですが、植生の変化がはっきりしていて面白く、個人的には好きなルートでした。

下山後は駐車場の傍にある奈良田温泉の女帝の湯に行きました。少しぬるめでヌルっとした泉質は心地よくつい長風呂をしてしまいそうなお湯でした。そして大広間にこたつがあるのはズルすぎる…ずっと帰れなくなってしまう…

雪山装備を背負っての笹山ダイレクト尾根は良いトレーニングになりました。次は真っ白な北岳を目指して…と奈良田を後にしました。

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2024.12
奈良田湖〜笹山南峰〜笹山北峰〜奈良田湖
13.8km
↑ ↓1965m
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