
【登山紀行】vol.23「風まとう笹の山 余寒の富士山8の字トレイル」
今回歩くことになった富士山の西側に位置する天子山地は、ずっと気になっていたもののなかなか足を運べていなかった場所でした。
2月上旬、上越国境の山へ山友と3人で乗り込もうとしていたところ、強烈な寒波が襲ってきてしまいあえなくボツになってしまいました。そこへ山友から富士山の西側に位置する天子山地の提案があり、満場一致でプラン変更。こんな機会でなければ行けなそうなので、せっかく行くならばと、もりもりのお楽しみプランで歩いてきました。
Written by Chika

さて、今回の山行は「富士山8の字トレイル」と勝手に命名し、毛無山駐車場をスタートし、山を越え浩庵キャンプ場に泊まり、そして山を越え毛無山駐車場に戻るというルートにしました。
富士山ロングトレイルの一部と東海自然歩道の一部、そして浩庵キャンプ場でのキャンプを組み込んだもりもりプランで富士山の西側エリアを楽しみ尽くすことにしたはいいものの、そのもりもりプランの成功の鍵はキャンプ場で過ごす時間をどれだけ楽しくできるか、アーンド撤収をどうするかにかかっていました。
なにせ山岳用の幕営セットしか所持していない我々は、あんなキャンプ場の聖地みたいな場所で堂々とくつろげるのか!?そして荷物どうするんだ!!という課題に出発前からぶち当たっていました。
あれこれ考え、ゴール地点から急いでキャンプ場に戻り撤収するという案をようやく生み出すことができましたが、なんとそこにさらなる救世主が登場。キャンパーでもある別の山友がキャンプだけ合流するよといってくれ、更にキャンプ用のテントやら焚き火台やら色々持ってきてくれて、そして!なんと荷物の回収までしてくれるとのこと。先の心配を払拭し完璧なプランを作り上げることに成功しました。

さてトレイル初日は茅野を5時ごろ出発し、向かうは浩庵キャンプ場。道中見える富士山や南アルプスの雪の積もった様子に各々感動しながら、下道でマイペースに目的地へと進んでいきます。
雪の積もった山に朝日が照らされる姿はとても美しく、淡いピンクに染まった世界についうっとり。
二人だと静かな?車内が三人だととっても賑やかで、数時間の車旅があっという間です。それだけでも誰かと山へ行くことへの価値を感じます。
キャンプ場には7:30過ぎに到着し、受付を済ませて早速設営を開始。キャンプ指定地の眼の前には本栖湖と富士山が視界いっぱいに広がっていて、さすがとしか言いようのない景色です。設営の様子を普段しないようなタイムラプス動画におさめてしまうのも、キャンプ場の雰囲気に当てられてしまったからでしょうか。この後のキャンプタイムが楽しみで仕方ありません。とはいえその楽しみを味わう前に、我々には今回の一番の目的、毛無山〜雨ヶ岳の縦走が待っています。一通りの宿泊道具を置いて、急いで登山口へと出発しました。

浩庵キャンプ場から毛無山登山口は車で20分程度の距離です。それでも歩くと半日がかりで、明日この道を歩くんだよな〜なんて思っていると束の間、ふもとっぱらキャンプ場が見えてきました。これまたキャンプ場の聖地の横を通り過ぎ、駐車場に到着。毛無山登山口はふもとっぱらキャンプ場の管理で、利用にはお金がかかります。確かにキャンプ場側でちゃんと管理をしないと無断駐車やらトラブルが発生しそうな場所です。

さっと身支度を整えて、9:40頃スタート。思っていた以上に日差しが暖かく、開始10分で5-Pocket Pantsの下に履いていたWUNDERWEAR LEGGINGSを脱いでしまいました。冬の低山歩きはこの組み合わせが抜群に心地よいのですが、この先毛無山までの1000mの上りを考えると今回はオーバーヒート気味と判断。

気を取り直し、薄っすらと雪が積もる道を黙々と進んでいきます。トレイルはところどころ岩がむき出しているところがあったりして、ぐんぐん急坂を上がっていくような登りごたえのある道です。途中振り返ると大きな富士山がよく見える場所がいくつかありました。スタートから1時間もすると木々に雪がついてきて、足元の雪も少し深くなりましたが、そのままツボ足で歩ける程度です。

毛無山山頂には12:30に到着しました。途中見えていた富士山はすっかりお隠れになり、やや風も出てきたのでいそいそとレインウェアを羽織ります。
お天気は斜め模様ですが、2日間で一番の上りを初っ端に終え、気分は爽快です。今回はのんびり(?)ハイキングなので、毛無山山頂でゆっくりカップ麺を食べることにしていました。山の上で食べるならカレー味一択。保温ボトルに入れてきた熱湯を注ぎ、3分待ちきれずに少し硬い麺をずずっと勢いよくすすると体の芯からあったまってきました。

腹が満たされたところで行動再開。雨ヶ岳までの稜線歩きの始まりです。この先は雪が多そうなのでチェーンスパイクを装着して歩きます。毛無山山頂から毛無山最高点までは展望が良く、富士山も頭だけ隠して姿を見ることができました。今も崩れ続けている大沢崩れがよく見えます。風は冷たかったですが、そのおかげで枝についた雪がしっかり残っていてちょっとした樹氷になっていました。毛無山最高点は樹林の中で、さり気なく看板が置いてありました。

そこから5分ほど歩くと大見岳に到着。ここにもさりげない看板が置いてあります。樹林帯の奥の方は開けていそうでしたが、先を急ぎます。
西側の斜面はかなり雪が深く、足をすべらせるように軽快に進んでいきます。途中緊張感の走るトラバースも何度かありましたが、慎重に足を出してクリアしていきます。南アルプス方面が見える場所があったのですが、雲に包まれ真っ白でした。上越のサブプランで茶臼岳を検討していたので、ここまで天気が悪ければすっかり諦めもつくものです。

次のピーク、タカデッキには40分ほどで到着しました。由来はわかりかねますが、見晴らしの良い開けたピークだったので、ひねらず「高いデッキ」でしっくり来る気持ちの良い場所です。ここでもしっかり富士山を拝んで、この日最後のピーク雨ヶ岳を目指します。

雨ヶ岳までの道中はこれまでと似たような雪のトラバース。そろそろこの道はお腹いっぱいだなぁ、と思う頃合いで雨ヶ岳に到着しました。個人的には天子山地の中で雨ヶ岳からの眺めが一番お気に入りです。竜ヶ岳ほどの賑わいはありませんが、富士山が笹の奥によく見え、存分に景色を楽しめました。

さて稜線歩きの次は端足峠までの急な下り坂です。雪がない時期に土がえぐれて、背が低い私ではしゃがまないと足が届かないような段差も多々あり、膝に負荷がかかる道でした。トレースはこれまでの道と比べるとしっかりあり、雨ヶ岳単体で登りにくる人が多いことを伺えます。ひいひい言いながら1時間ほど急坂を下り、峠に到着。「翌日もここを通過するぞ〜」と雪にこの日の下山方向を矢印を落書きして、本栖湖へと下ります。

本栖湖に着く頃には日が落ち始め、なんとかして浩庵キャンプ場で夕日を見るべく急ぎ足でロードをこなします。本栖湖周辺は本当に風が強くて、日陰に入るとかなり寒かったです。遠くに見えるキャンプ場をじい〜っと見つめると、我々のテントの横でどうやら仲間が一足先に焚き火をしている様子が伺えました。一分でも早く焚き火にあたってゆるキャンを楽しみたい一心で、寒波を全身で受け止めながらせっせと足を運ぶこと50分、キャンプ場に到着。ギリギリ滑り込みで夕日をカメラに収め、売店で温かいものを入手し、るんるんでテントへと戻りました。

何年ぶりかの洪庵キャンプ場、やっぱり最高のロケーションで、こんなオフシーズンの平日ながら我々以外にもキャンプを楽しんでいる人が何組もいます。
テントに着くと、先に焚き火を楽しんでいた仲間が「おかえり〜スモア食べる〜?」と迎えてくれました。スモアが一体何なのかよくわかっていない私はきょとんとしながらも、普段の山行では味わえない「帰ってきた感」にほっこり。
焚き火にあたれる幸せを噛み締めつつ、真っ暗になる前に急いで夕食を作ります。キャンプなので、贅沢にしようと仕込んできたバターチキンカレーを振る舞いましたが、お米の炊き上がりがやや失敗…カレーの味は及第点でした。
この日の夜は氷点下10度まで冷え込みましたが、Rabのmythic G JacketとSheltのダウンパンツのおかげで快適に過ごせました。

翌朝は6:30頃に起床。寒い時期の山行で一番辛いのが朝シュラフから出ることです。シュラフのぬくもりから脱出できないでいると、外から男性陣の声が聞こえてきて、急いで支度をしてテントの外へ。
朝食はホットサンドとコーヒーで優雅な一日のスタートです。柔らかい日差しを浴びながらのんびりしていると、これからあと19km歩くことが信じられなくなってきました。名残惜しみつつ、宿泊道具を仲間に預け3人で洪庵キャンプ場を出発します。

キャンプから竜ヶ岳の登山口までは湖畔沿いのロード歩きです。富士山とこれから登る竜ヶ岳を眺めつつ歩いていると、当たり前だけれども、富士山って改めてきれいな円錐形の唯一無二の山だな、としみじみ感じました。昨日からずっと富士山を見ていて、まるで富士山と一緒に歩いているかのような感覚とでも言うのでしょうか。富士山が視界に入ると思わず「よっ」と心の中で声をかけてしまうようになっていました。

竜ヶ岳は湖畔登山口から最短ルートで一気に登り切りました。昨日までの道と比べるととても歩きやすく、スイスイ足が進んで気づいたら稜線に出ていました。山頂は広くひらけて、富士山が目の前に視界いっぱいに現れます。辰年は竜ヶ岳でダイヤモンド富士、とおっしゃっていたお客様を思い出し、ダイヤモンド富士は日の出にしては比較的遅い時間で楽しめるので今度来る時はそれもいいなあ、とついつい先の山のことを考えてしまいます。
ベンチでお茶しながら一息つきつつ、この先のことも考え程々に端足峠へ出発。この端足峠までの下りも道がやや荒れていました。先程の登りとは打って変わって笹がのしかかってくるようなつづら折れの道を慎重に下り、13:00前に端足峠に到着。昨日書いた矢印がまだ残っていてちょっと嬉しくなり、これから降りる方面に矢印を足して石割峠へ下ります。

そこからは東海自然歩道に合流。吊橋を渡ったり、開けた草原の中を歩いたりと、雰囲気がロングトレイルの味のある平坦な道にガラッと変わりました。東海自然歩道もいつかしっかり歩いてみたいものです。

気持ちの良いトレイルは1時間ほどで終わり、行きに車で通った国道に出ると猛風に煽られ急いでレインウェアを着込みました。駐車場までの途中にある道の駅朝霧高原に寄り道し、ちょっと遅い昼食。こういう場所で地元の食材を使ったご飯を食べるのも山行の楽しみの一つです。お腹をしっかり満たし、スタート地点の駐車場までの残りのロードをこなします。足に疲れが溜まってもはや消化試合。この後の温泉に早く浸かりたい一心でゴールを目指し、16:30頃に無事駐車場に帰ってくることができました。
8の字で繋いだ天子山地は山もキャンプもロングトレイルも楽しめる充実した時間になりました。
〜〜余談〜〜
温泉は何年か前に親と行ったみたまの湯にしようと決めていました。駐車場に着くとゆるキャン△の看板が。度々作品に登場していたことを現地で知り、意図せずゆるキャン△の聖地巡礼となった2日間でした。期待していた山々の景色はそういえば夜で何も見えないことにお風呂に入って気づくのでした。
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2024.2 天子山地
DAY1 毛無山駐車場〜毛無山〜雨ヶ岳〜端足峠〜浩庵キャンプ場
13.2km
↑ 1321m ↓1256m
DAY2 浩庵キャンプ場〜竜ヶ岳〜端足峠〜道の駅朝霧高原〜毛無山駐車場
18.8km
↑ 692m↓743m
合計
32.0km
↑2013 ↓1999m
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